道玄坂ロック -dogenzakarock- 音楽レヴュー

渋谷道玄坂のロックバー。 約7000枚のLP+CDをアトランダムに個人的な好き嫌いを多分に含みレヴュー。 http://dogenzakarock.com/

カテゴリ: レヴュー

The Blues Brothers - Briefcase Full of Blues
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【A】
1. Opening: I Can't Turn You Loose 
2. Hey Bartender 
3. Messin' With The Kid 
4. (I Got Every Thing I Need) Almost 
5. Rubber Biscuit 
6. Shot Gun Blues 
【B】
1. Groove Me 
2. I Don't Know 
3. Soul Man 
4. 'B' Movie Box Car Blues 
5. Flip, Flop & Fly 
6. Closing: I Can't Turn You Loose 
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世界一有名なレイバンウェイファーラーサングラス。
ジェイク(ジョン・ベルーシ)とエルウッド(ダン・エイクロイド)によるブルース・ブラザーズのデビューライブアルバム。

収録されたライブコンサートはカリフォルニアのユニバーサル・アンフィシアター(現ギブソン・アンフィシアター)という野外会場でスティーブ・マーティンの前座として6000人のキャパで行われた。

映画『ブルース・ブラザーズ』がアメリカで公開されたのは1980年。
つまり、このライブアルバムは映画制作の前に発売された。
日本ではジョン・ベルーシの名は一部のマニアには知られていたと思うが、1981年に日本で映画が公開されるまで<ブルース・ブラザーズ>というコンビ名はなじみが薄く、アルバム発売時には恐らく知名度は皆無に等しかったはず。
しかし、アメリカにおいては、このデビューアルバムは200万枚をセールスしビルボードでナンバー1を獲得したということで、ブルース・ブラザーズが映画公開以前に既に大スターであったことがわかる。

ブルース・ブラザーズはアメリカNBCで1975年に放映が始まった≪サタデー・ナイト・ライブ≫へのレギュラー出演によるキャラクターであり、企画物アルバムとしてダブルミリオンを稼ぐ前兆はたっぷりあったに違いない。
サタデー・ナイト・ライブは国民的番組として今も放送が続いている。

当初、サタデー・ナイト・ライブでのブルース・ブラザーズは、お馴染みのサングラス&黒スーツでサム&デイヴをパロディしたブルースやR&Bのスタンダードを笑い要素をメインに演じるものだったそうだ。
冗談半分のコントは次第に本気度を増し、ベルーシ&エイクロイドのバックに以下のミュージシャンをブルース・ブラザーズ・バンドとして番組にレギュラー出演させることになったということだそうな。

・Paul “The Shiv” Shaffer (Hammond, Piano)
・Steve “The Coronel” Cropper (Guitar)
・Matt “Guitar” Marphy (Guitar)
・Donald “Duck” Dunn (Bass)
・Steve “Getdwa” Jordan (Drums)
・Lou “Blue Lou” Marini (Tenor Sax)
・Alan “Mr.Fabulous” Rubin (Trumpet)
・Tom “Triple Scale” Scott (Tenor Sax)
・Tom “Bones” Malone (Tenor & Baritone Sax, Trombone)

このメンバーの顔ぶれはどう考えても冗談とは思えない。
今さら説明不要のビッグ・ネーム。

ブルース・ブラザーズはこのバンドメンバーを引っ張り出した時に【本気で冗談をやるダンディズム】を極めた。
冗談とはもちろん愛のあるユーモアでありエスプリである。
そしてそのダンディズムはブルース・スピリットにおいての美学とも思える。
この美学を貫いたことによって、過激なまでに黒人音楽への愛を唱える純真な姿勢が認められ、人種の壁を越え、本物の黒人にも支持されることとなったはずだ。
そうでなければ映画であの豪華キャストが集まるはずがない。

ブルース・ブラザーズ結成の経緯は、1974年、もともとR&Bマニアだったカナダ出身のダン・エイクロイドがシカゴ系のブルースロックとメンフィス系R&Bを合体させたバンドの構想を立て、ハードロック好きであることを言い訳にバンドに入ることを渋るシカゴ出身のジョン・ベルーシに“ダウンチャイルド・ブルース・バンド”のレコードを聴かせて説得し、ボーカリストとしてスカウトした、ということらしい。
ベルーシのハードロック好きは割と有名で、死の直前にハードコアメタルバンドを組む予定もあったそうだ。

収録曲について。
「I Can't Turn You Loose」「Messin' With The Kid」「Soul Man」「Flip, Flop & Fly」はメジャーな曲だが、他の曲はなかなか渋い選曲でブルースやR&Bのヒットパレードでは無い。
マニアじゃなければ聴き辛いのではないだろうか?
正直なところ、この選曲でよく売れたな、と個人的には思う。
二人の歌唱について聴くべきはその息遣いで、レコードなのにこれほど動きが目に浮かぶボーカルはすごい。
本気でやっていることがよくわかる。
演奏は聴き応えがあり、スティーヴ・ジョーダンのヒップなドラミングは必聴です。

忌野清志郎が1992年にリリースした『Memphis』というアルバムがある。
そのレコーディングはメンフィスのスタジオでステーヴ・クロッパーのギターとドナルド・ダック・ダンのベースにより1991年に行われたのだが、そのレコーディング中の出来事を同行していた関係者から聞いたことがことがある。
ある日、レコーディングを終えてスタジオ近くのライブレストランに皆で食事に行った。
その店ではハウスバンドが古いR&Bを演奏しており、ハウスバンドメンバーが客で来ているクロッパーとダック・ダンを見つけ、ぜひステージに上がって演奏して欲しいとステージ上からお願いした。
2人は快くステージに上がってMG'sやオーティス・レディングの曲を1時間ほどセッションしたそうな。
まるで学芸会で友達のバンドに気軽に参加するようなノリで本物がフレンドリーに演奏を聴かせてもらえるんだから羨ましい。

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【A】
1.ジェット警察
2.これが私の生きる道
3.Cake Is Love
4.愛のしるし
5.春の朝
6.レモンキッド
7.小美人
【B】
1.ネホリーナハホリーナ
2.哲学
3.De Rio
4.サーキットの娘
5.渚にまつわるエトセトラ
6.Mother
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パフィーの2nd。
名作。 

男性ファンだけでなく、同世代女子と音楽面のシャレを理解できる通な大人を巻き込んでミリオンセラー。

音楽では「~のような」という表現を褒め言葉として使うことは少ない。
オリジナル曲は過去の何にも似ていないことを良しとすることが多い。
しかし、その考えはこのアルバムを聴くと時代遅れだと気付く。
収録曲はどれもどこかで聴いたことのあるアレンジだが、過去の名曲に愛を込めてオマージュする潔さこそ粋であるというハイセンスなポリシーを感じ、実にカッコよい。
 
サウンドプロデュ―スの奥田民生さんは、楽屋落ちに近い懐の深いノスタルジックなパロディを完璧なプロダクションで聴かせてくれる。

Won't Get Fooled Again(The Who)の「ジェット警察」、Day TripperとTwist&Shoutの「これが私の生きる道」、テープエコーで60年代キャンディーポップ「Cake Is Love」、Bad Fingerのようなアップルサウンド「愛のしるし」、CarpentersとBreadをブレンド「春の朝」、Rickie Lee Jonesばりのブルーアイドジャズ「レモンキッド」、Black Sabathとking CrimsonとAbbey Roadのコラージュ「小美人」、Nick LoweのようなR&B+ブリットポップ「ネホリーナハホリーナ」、岡林+Joan Baezのプロテスト「哲学」、Bad Company+Freeの「De Rio」、60年代LAのサーフ&モーター「サーキットの娘」、ELOとThree Digreesを合体させた「渚にまつわるエトセトラ」。

このアルバムがリリースされた1998年の日本の音楽事情はというと、ちょっと混沌としていて、Xのhideさんが自殺し、GLAYやL'Arc-en-Cielがヴィジュアル系と呼ばれることに抵抗感を表すようになり、ゆらゆら帝国とスーパーカーがデビューして、ケムリやバッファロー・ドーターやギターウルフがアメリカに進出し、ボアダムスのサイケデリックなレイヴが受けていた。
パフィーのわかり易いポップスがロックファンに受けたのはそんな環境の反動かもしれない。 


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【A】
1. Rock 'n' Roll Star  
2. Shakermaker  
3. Live Forever  
【B】
1. Up In The Sky  
2. Columbia  
3. Sad Song  
【C】
1. Supersonic  
2. Bring It On Down 
3. Cigarettes & Alcohol  
【D】
1. Digsy's Diner  
2. Slide Away  
3. Married With Children 
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オアシスの1stアルバム。

90年代の“クール・ブリタニア”を音楽の世界で先導したオアシスのデビュー作にして、僕にとってはオアシスの最高傑作。彼らは自らのこのアルバムを越える作品を出せないままに2009年に解散してしまった。

90年代前半は音楽の世界では、ブリティッシュ・インヴェイジョンとまではいかなくても、ちょっとしたUKブームが起こっていて、音楽や映画はもちろんファッションもUK=クールった。
ネオモッズと呼ばれパンツやジャケットが細くなりサイドゴアブーツが流行りシャツの襟も小さくなった。
そんなムードのなか、音楽においても媒体ではそれまではRO誌ぐらいでしか扱われていなかったハッピー・マンデーズやストーン・ローゼズ、ニュー・オーダー、シャーラタンズなどいわゆるマッドチェスターがマイナーなダンス音楽からメジャーなものに移行していった時期だったと思う。

多くの音楽好きな人達の生活にUK色が混じり込んでいった勢いに乗って登場したオアシスは、その頃の多くのUK音楽が得意にしていたリズム重視のレイヴものとは全然違うストレートで分厚いロックアレンジを掲げて真正面から殴り込みをかけてきた印象だった。

このアルバムが発売された前後、今は無き、新宿のローリングストーンにはBlurのParklifeと横並びでで壁にレコードジャケットが飾ってあった。(1994年の初来日時にはオアシスのメンバーがローリングストーンに立ち寄りったそうな)
僕はこのアルバムをブラーのパークライフと一緒にリアルタイムで購入したが、しかし、このアルバムの出来はそこまで絶賛されるほどのモノだろうか?というのが当時の僕の感想で、一度か二度聴いて放ったらかしにしていたと思う。

ギターリフがルーズに延々続く演奏は個人的にはかなり退屈で、彼らの当時のキャッチフレーズだった「現代のビートルズ」には全く思えなくて、ブラーの変則リズムとメロウなコードで奏でられるポップアルバムの方がよっぽどビートルズを継承していると感じたし、バンドの内輪モメやトラブルが絶えないスキャンダラス性がなんだかわざとらしく、そういった不良的な演出が幼稚であまり魅力的ではなかった。
ただ、リアム・ギャラガーの天才的なメロディメイクと、22歳とは思えない貫禄のあるボーカル力だけは圧巻で強い光彩を放っていた。でもリアム以外のメンバーに魅力を感じなかったんだ。

僕がこのアルバムが絶賛され続けている理由がわかったのは大分後になってからだ。

60年代に世界を席巻したマージービートの輝かしい栄光と、70年代のサイケデリックの残骸+パンクのボルテージ、そして、マッドチェスターの残り粕ではあるが純度の高いグルーヴのエッセンスがミックスされた「クール・ブリタニア」の体現化であり、偉大な遺産である≪Made in Britain≫の覆刻をテーマとしてあらゆるブリティッシュロックサウンドを形象化している。
大げさに言えば、このアルバムはブリティッシュロックの歴史が混じり合う四つ角で当時のイギリスそのもののムードを表現している。
ついでに言えば、オアシスは当時のイギリス国を挙げての「クール・ブリタニア」の管制の役割を担っていたらしい。ノエル・ギャラガーはブレアの当選の祝辞を述べたほどだから。

このアルバムを英チャートナンバーワンに送り込んだことで、ギャラガー兄弟が演じた“労働者階級の英雄”のイメージは、ビートルズ時代の「スウィンギング・ロンドン」の復活という意味においてルネッサンスとなっている。
そして、その飾り気のないある意味気高い姿勢は、アルバム1曲目にぶち込まれたこのアルバムの最高傑作曲「Rock 'n' Roll Star」に現れていて、この曲はオアシス以降全ての純正UKロックミュージシャンのアンセムとなっている。

結局、このデビューアルバムの空気こそオアシスのアイデンティティの源でありメンバーとっての不変的な血の根幹でもあるはず。

僕はオアシスのライブを生で何度も観たけど演奏はいつも退屈だった。
尚更のこと、パッケージにレコーディングされたこの荒削りな作品こそがこのバンドの権化と感じた。
そしてオアシスが日本にブレイクさせた「クール・ブリタニア」が1996年に『トレインスポッティング』を日本でヒットさせUKのイメージを定着させた。

1994年のちょうどこの頃、僕はロンドンに1週間旅行したんだ。
ホテルのテレビでは何度もこのアルバムのCMとMVが流れていたし、街中のビルボードにもチャーリー・ワッツ・トリオのツアー告知と一緒にポスターが貼りまくられていたのを憶えている。
随分アイドル的な扱いだったな。
日本ではロックバンドだったが本国イギリスではアイドル扱いなのかもしれないと感じた、当時は。

日々気になった音楽について、個人的な思い入れを多分に含んだカタチで、なるべく時間が許す限りレヴューしていこうと思います。
あくまで僕の気分で書き綴るに過ぎないので、その音楽に対してあまり良くないことを書いたとしても気にせず軽く読み流して下されば幸です。
 

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